2021年6月21日(月)

夕方の買い物の帰りに、道沿いにある見晴らしのよい高台のことを思い出し、夏至だからねというよく分からない理由を付けて原付で上っていった。夏場らしく水蒸気で霞んだ遠景のなかに、沈み行く太陽と車が往来する町並み、獲物を探すつばめや東の寝床へ向かうからすの群れなどが目に入った。地平線近くの雲間に滑り込んで輪郭がはっきりした太陽を見ながら思う。標準的な恒星があそこで煮えたぎっていることや、光の速さで何分もかかる距離にありながらあれだけの面積を視野に持つこと、この空があの雲のように様々なレイヤーを持ち、その上部には剥き出しの宇宙空間とあの恒星があるんだ、ということなどを。そしてその空に、暗い森から日だまりへ飛び出し、日焼けした道を抜けてたどり着く、風が吹き抜ける夕暮れの草原のことを重ねていた。もしいつか自分の創作世界の中で、その草原に誰かがたどり着いたときには、その様子をなんとか書き起こしてみたいな……。レイチェル・カーソン『センス・オブ・ワンダー』(新潮社)を読んで何度も泣きそうになってしまった。そう、これ。こういう言葉だったんだ。自分の中にもそれなりに残存して自然へと惹きつけられる原動力のことが書かれていた。この歳になれば物事に名がつくことは怖くない。センス・オブ・ワンダーとタウマゼインを希求しながら生きていこう。ほか林将之『樹皮ハンドブック』(文一総合出版)のめぼしいページに付箋を貼った。携行しやすい装丁のなかに必要な情報が載っており、これもよい本になりそうだ。夏至の夜につき、読みさしにしているたのしいムーミン一家とムーミン谷の夏まつりを、作中で夏至のあたりまで読み進めるつもり。訪れる季節と物語を撫でながら過ごす寝しなは、上質な甘い菓子に感じる。

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