2020年3月31日(火)

耳鼻科でアレルギーの薬を出してもらう帰りに近場の桜並木へ向かった。中央分離帯のある大きな道だけれど、工業団地の奥でぶつんと途切れているから、ここを通る車両の目的は周囲の工場へ出入りするか、そばの国道を離れてひとやすみに来たかのどちらか。並ぶ桜は五分から七分咲きという感じだった。その下を原付でのんびり走る。似たり寄ったりな速さで桜並木を流したり、路肩に止まってそこだけの時間を過ごす車を、まばらに見掛けた。満開のころまた来られるといいな。あしたはそれなりな雨降りの予報で、それだと桜の下にアミガサタケが出やすくなるのかなあ、探せるかなあと思う。この三月は情報を閉ざしたり、祖父が亡くなって葬式に加わったり、風邪を引いたりした。色々あったようなのに大して思い出せない気がする。そういえばもう水を入れている田があった。沈殿しない気持ちの中を季節が推進していく。

2020年3月30日(月)

きのう積もった雪はほとんどが解けて消えた。取り寄せた「グラハムトーマス」という品種のスイカズラ(ロニセラ/ハニーサックル)を鉢に移し、部屋のコクチナシと一緒に置いた。強香種だとか。園芸図鑑の説明では肥料食いに思えたので、完熟堆肥と顆粒の化成肥料を鉢底へたっぷり入れた。上手く育つとよいのだけれど。夏場のそのへんの茂みから、野生スイカズラの甘く爽やかな香りが漂ってくるたび、これ好きだなあと感じていたのだった。ほか、グラハムトーマスと「セロティナ」が1ポットずつある。これらのスイカズラとクレマチスの「フォンドメモリーズ」は外に植える予定。猫を埋めた周りにはいずれシュウカイドウが咲くはず。秋冬のあいだの自分は活力が失せて沈黙していたのに、こうして春めくと俄然生き返って動き出してる。

2020年3月29日(日)

雪は昼過ぎまでどさどさと降った。積もった分が溶けるのはあした以降だろね。やはり長いこと積んできた『よくわかる気象・天気図の読み方・楽しみ方』(成美堂出版)を読み始めた。天気に関心がありながら、理科の授業で習う範囲の知識を曖昧なままにしてきたのだった。恥ずかしい。ほか、いまくらいの季節がくると目を通すことにしている現代俳句協会編『現代俳句歳時記』(学研)の春版を手元へ持ってきた。夏版もそのうち。

一年か二年前に道の駅のフリマで掘り出して以来、とても気に入って薄闇を共に過ごした石油ランプが、朝起きて見たら壊れてた。ガラス製の油壺が夜のうちにひとりでに割れ、たっぷり入っていたパラフィンオイルは床のカーペットへ染み込んでいったのだった。あああー。カーペットのしみはティッシュ敷いて重石をしておこう、吸うはず。それよりも、この石油ランプは理想的な形状で好ましい出会いをしていたから、大切にしたかったのに。江戸川屋ランプ – 灯油ランプの専門店棒芯レトロ ランプ シンプル クリアー(商品番号 S27020) が割れたものに近い形状で、手に入れた値段も近かったため、購入。もし今後、口径32mmくらいのガラス容器を見つけられたら、無事なままの継ぎ手やホヤはまた活用できる。取っておこう。

おこもり21日目。30日目が過ぎたら元に戻ろうと思う。あと一週間と少し。優先度の高い積ん読はいくつか読み終えたことだし、そうした収穫をもう少し増やせたら。

2020年3月28日(土)

午後より雨。明日午前中にかけ雪またはみぞれになるとか。八重のコクチナシは昨日の深鉢へ移し、部屋のかき菜の隣へ置いた。一月くらい経って根と土がこなれたら表土に堆肥をやろう。そういえばそのかき菜はアブラナ系の黄色い花をまた咲かせてる。母の愚痴を三時間ほど聞いていた。収納のほうはおおかた片付いたから、残った段ボール箱の山とほこり、がらくた類の掃除は明日かそれ以降に。引越しじみた労力を注いで要らないものの中から紙切れや写真やはがきなんかを見つけ出した。そういうわずかなものが種々の記憶や感情のよりどころとなることに愛しさを感じる。箱詰めが済んで処分予定とした本や漫画類は15箱程、こんなに沢山捨ててしまって大丈夫かと薄ら引く。かつて身近に楽しんだ作品が多い。なにかしら、それが必要ないと感じたとき切り捨てる自分の潔さって、「そりゃやってはいけるだろうけれど未練はないの?」という心の問いも聞こえて、いちいち戸惑う。腰が疲れて眠たい。

2020年3月27日(金)

園芸店にて、取っ手が付いた樹脂製の深鉢を二つ買ってきた。8号相当。日曜は雨らしいから明日の午後あたり植え替えをやれたら。収納のほうは要らない本を箱詰めにし始めたり、整理せずに置かれている物置状態の荷物を片付け始めたり、手掛けている範囲が広がってきた。この土日で全体の蹴りが付くかどうか、ってとこ。

長らく積んできたきゆづきさとこさんの『棺担ぎのクロ。~懐中旅話~』全7巻を一気に読了。物語後半へ向かうにつれ、自分の心を見つめ過ぎたとき近づいてくる、あの恐慌状態のようなものを感じた。でも、読み終えてみて、風が吹いていくみたいにすっきりしたよ。2006年の暮れにこの漫画の1巻を手に取り、7巻まで揃えながらも積んできたんだから、こうして物語の結末へ辿り着くまでに13年掛けたことになる。先日通しで読み終えたARIAも同じ時期に出会って積んできたのだった。2006年末というと僕も棺桶の彼女みたいにぎりぎりで生き延びる姿勢に入ったころだ。あのころのことは記憶や記録がほとんどないけれど、おそらくこれから先の人生も含めた中で、指折りの苦しい時期だった。ああしたときでも知ってか知らずか、いまここへ繋がる受容の糸を何本か握っていたんだなーと、ほんのり不思議。本って、読み手の側に受け入れる準備が整って初めて意味あるものとして開かれる、理屈としては当り前のことなんだけれど、こちらを少し特別な気持ちにさせてくれるものだと思う。『棺担ぎのクロ。~追憶旅話~』という番外編を見つけた。

いま始まったラジアンFでやまだひさしさんが話していた「世の中デコボコみたいになってるから」に、好きだったゲームソフトの設定を思い出した。糾える縄というか、エネルギー保存則みたいに幸せ保存の法則がある、というお話から始まるトランプ遊びの物語。「めるへんうぉーかーAlice」というシリーズで、検索してみたところ体験版はいまもVectorにあるぽい。

2020年3月26日(木)

クローゼットの収納に手をつけ始めた。ボール箱をもう少し高く積めるようにして、使わないものを効率よく仕舞い込もう。祖父が置いていった電動ドリルで樫のほだ木に穴を開け、クリタケの菌駒を打とうとしたところ、一本全部に穴を開けたところでドリルからビットが外れ、木の幹深くに潜り込んでしまった。あー、僕はこういうへまをするやつだったか……。祖父が使っていた菌駒用の木工ビットは根本が丸軸という形状をしていて、これだといくら噛み合わせをきつくしても負荷が掛かれば外れるよねえ、なんて訝しんでいた矢先だった。ホームセンターで六角軸の菌駒用ビットを買ってきた。これなら外れることはないはず。一度は埋まった刃を取り出そうとほだ木をのこぎりで切り出したのだけれど、二度目でもういいよ、という気分になった。樫の木はほんとに堅い。夕暮れの空は淡く限りない階調の中に緑の領域を宿していた。三月の日没には繊細な緑色が出ることがあり、今日がそういう日だったみたいだ。自然や気象を相手にするのはいいかもね、と思う。

2020年3月25日(水)

スムージーは意外と簡単に作れるんだね。豆乳(または牛乳)とバナナをベースに組み合わせることで、大抵の野菜はおいしく飲めそう。そしてびっくりする、お腹にみっしり来るというか溜まるというか。朝はこういうので済ませるのもありだと思った。ほうれん草と冷凍バナナがもりもり消費されていく。

オンラインやディスプレイから(おおむね)離れて十七日目。いま思うと、これを始めてから数日ほど漂っていた奇妙な感覚は、情報に対する離脱症状だったのかも知れない。情報を取り除いたことで生じた意識の隙間を満たすように、聞いてる音楽や自分の考えが流れ込む、知覚の密度が増えているような感覚だった。……この感覚は話が逆で、昔の人にとってはこれが当り前だったと思うのだけれど。無くてもいいような隙間や余剰だから、刺激的な情報がそこを取って代わることは容易だったんだろうね。でも、無駄に思える精神のリソースの空きは、なにかを考えたり創り出していく上で大切なものだと思う。そしてこのリソースの空きはたぶん、情緒にも深さをもたらすものだよ。

Vanness Pen Shop, Little Rock, ARよりインクが届いた。注文から三週間ってとこ。Diamine Grey Stipula Calamo Dark Grey Papier Plume New Orleans Collection Bayou Nightfall の三本。Diamine Greyはとても使いやすそうな濃さをした、ニュートラルなグレーのインクだった。なるほどねえ、グレー系を探す中でこの名をちらほら見たのは、こうしたバランスのよさがあるからか。Stipula Calamo Dark Greyは暖色系の灰色で、インクをティッシュに含ませると紫と黄色の二色が出てくるためか、書いたものの色味も複数あるような。Papier Plume New Orleans Collection Bayou Nightfallは青緑系の灰色。この三本と手持ちのJ. Herbin Gris Nuageを合わせたグレー系インクを、ノートつける夜の雰囲気ごとに使い分けたい、なんて思っていたのだった。

2020年3月24日(火)

今日届いていたお葉書をこれから読む。オンラインにて苗をいくつかお取り寄せ。着いたら鉢を見繕おう。町のあちらこちらに気の早い桜が咲いているのを見掛けた。

2020年3月23日(月)

ムーミン・コミックスにて、小さな生きものがムーミントロールの周りをうろちょろしているのに気が付いて、全巻のコマを読み返して登場シーンを確認していた。暇そう。彼の名前はソフス。新聞に掲載された全ての話がコミックスに収録されているわけではないから取りこぼしがあると思うのだけれど、ソフスが話す場面はほんのときどきに限られ、特にその名前が挙がる場面はコミックスの中では三回。14巻『ひとりぼっちのムーミン』に、結婚するいとこからムーミンの相棒を引き継ぎ、気落ちしているムーミンを励ましている場面がある。このソフスという生きものがけっこう可愛いのだよね。コマの中にいるか探す楽しみみたいなのもあるし。小説のムーミンの挿絵にもこの黒いねずみの姿をちらほら見掛けた気がする。これまで名前のないキャラクターかと思っていたから、彼らのうちの一人であっても名前があり識別可能だなんて、なんだか思いもかけないことだった。ちらっと検索したらムーミン公式サイトのキャラクター紹介にいた。ムーミン・コミックスは小説と絡みついた別のTLを持っているのかなーと思う。僕はこれまで小説のほうをバイブル扱いしてきたけれど、コミックスの世界も豊饒というか一つの世界になっていて、ここへ手を伸ばして良かった。残るはトーベ・ヤンソン・コレクション。次のクリスマスにかなあ。

今年の園芸なんにする? というのを祖父の死去などがあり決めていなかったため、手元の図鑑や育成本をめくって目ぼしいのを探し始めた。車葉草(ウッドラフ)は面白いかも。この植物には桜餅の香り成分クマリンが含まれていて、冷凍/乾燥によって細胞壁を破壊することでその香りが漂うそう。小さな花も綺麗。

桜が咲くのと前後してアミガサタケ探しやろうね。シーズン中にさまよってるのにまだ見つからないけれど、銀杏や桜の周りの、落ち葉や背の低い雑草などの中から生えるそう。このきのこはとても美味しいらしい、ということが大事。

2020年3月22日(日)

どこかでうぐいすが鳴いていた。昨日に引き続きムーミン・コミックスを読んでる。これは陽だまりみたいな気分が宿るなあ。付箋貼ったコマのスクリーンショットをいつか撮ろう、ひとりで楽しむ用。日が傾いたころ耳元でぷわんと聞こえたのは蚊だろうか。蚊取線香(金鳥の除虫菊の)の匂いは個人的に、潮や朽ち木とともに、特別好きな匂い上位三位か五位に入る。四月まで待つかと思うけれど、蚊取線香を焚く頃合いを覗うのは毎年の楽しみなんだよねえ。ごみを出す夜の道すがら、りんりんという風鈴の音がひとさまの家から聞こえてきた。もうじき新茶の季節が来る。緑茶や烏龍茶は旬の流通がほとんどで、今年も確保したい茶葉が幾つか。