日が傾いてきたころに来た雷雲はすごかった。積乱雲が発達するのに合わせて、雲の底は龍かなにかみたいに激しくうねり、それが雷鳴とともに続々と上空を通過していくのだった。山の上のような涼しい風が木立へ叩きつけ、次第にばらばらと雨も落ちてきて、夕立の本隊となった。残りの夏のぶんのらいさまをまとめて落としていったかのよう。
『バグダッド・カフェ』を観た。ばきばきと音がしそうな空の青さがよかった。そしてしょっちゅう誰かがコーヒーを飲んでいた。ヤスミンがお客たちにコップの手品を披露しているあたりの雰囲気が好きだなー。物語前半はみんな殺伐としていただけに、居合わせた人たちとお店の片隅でまったり盛り上がっている感じが、潤いが差してくるその過程の幸せに見えた。お店がすっかり繁盛したときよりも、その手品のあたりの場面が好きだ。