吹き飛ばされそうなくらい強かった那須颪は宵のころにぱたりと止んだ。明日以降に寒気が降りてくるらしく、北日本では吹雪くところもあるそう。
夕暮れの買い物途中に、日の沈んだ西空が微細な色彩をまといながら黒く染まっていくのを見て、眺めの良い高台へ立ち寄った。夕方の空に緑色した領域が現れるのは、空や気象の条件がとても良いときなのだけれど、そうした日も実際に見えている時間もほんのわずかだ。今日の空には、青から黄や橙へと移ろいゆく領域のあいだに、そうと見ればよく分かるような綺麗な緑色が乗っていた。地平線下に沈んだ西の太陽から南の上のほうへ、黄道を可視化するかのように金星──木星──土星が一直線に並んでいる。光の流れる市街を眼下に、大半が濃紺と黒に包まれ減光していく空を見ていて、ふと、その惑星の並んだ黄道のあたりが太陽系の巡る円盤のように見えた。空というものがただ色をまとってそこに広がっているだけではなくて、そこは剥き出しになった宇宙と直に繋がっている、惑星や恒星の運動もそこでまざまざと展開されている、自分たちはそういう躍動する空間の中に存在しているという立体的な感覚が、すっと心へ入ってきたように思う。眺めているうちに金星は地平線へ沈んでいき、ぎらぎらした赤い光はやがて見えなくなった。
買い物を終えた帰り道、今度は逆の東の空を見やると、缶詰の黄桃のような色をした月がちょうど山の向こうから昇ってきていた。こういうでかい月って見慣れないというか、目にするたびに小さな驚きがある。