『ブレードランナー』のDVDのラストを見直していた。世界のありのままの姿、地上から遠く離れた辺境の驚異を、不当に奴隷扱いされながら目の当たりにした人が、その過程で身に受けた憎しみや不条理さを微笑みに変えて死んでいった場面が、涙ぐましいと思う。そうした人はかつてきっと、この地上のあちらこちらにいたことだろう。そのなかには苦痛と空しさを抱いて去っていった人のほうがずっと多いだろうから、僕にはそうした思いを慰撫する権利や力はない。でも、そうした人々のために、なにがしかの思いを馳せることはできそうな気がした。