本棚のナウシカを一日かけて読破していた。こういう骨のある作品を読み耽るなら年の暮れに限る。腐海が終わった清浄の地へ皇弟ミラルパが駈けていった場面の、あの強烈な解放と憧憬に涙ぐんでしまう。腐海を見捨てることになるとしても、あるいは科学者たちの生命蔑視に荷担するのだとしても、僕なら墓所のヒドラが吹聴した「現生人類が清浄に適応するための技術」になんらかの反応をせずにはおれないだろなと思う。自分には個人としての視座ばかりが強すぎるかも知んない。そして良い味を出してるクロトワは、おでんで言うならしいたけかにんじんだな……。椎名誠の古本が五冊届いているから、正月はそっちを読むつもり。つい最近になって自覚が出てきたことに、僕は心細い知覚の不確かさをとっくにくぐり抜けてきたんじゃないだろうか。自然の変化や美しさを味わえて、日々の眠りを得られる幸せがある。断定には早いのだけれど、少なくとも、生存を保ち続けてきて、生を手放さなくて、よかった。そういうことをまともに噛み締めることが出来るようになっていた年だった。来年は心の安定感や他者との交流を大切にしていけたら。