バンコクでの十日間を過ごしてうちへ帰ってきた。あの喧噪とここの静けさとに不思議な感じがする。出発前に感じていた不安は消えて、いまは疲れと安堵が大きい。出発前には朝晩はまだ寒くて桜も満開寸前だったのが、帰ってきてみたら心地よい気温ともうほとんど散っていく葉桜が迎えてくれて、田に水は入りかえるの合唱が聞こえ、庭にもあたりにも春の花が咲き乱れていた。バンコクの毎日35度を超える暑さや日射しの強さから比べると、日本の春は新緑の色がさまざまで目にやわらかいなあと思う。よい旅行だった。勇気を出すとご褒美があるというのは紛れもないこの世の理なのだな。今宵はかえるの合唱を聞きつつ、ランプの灯りで静かにシードル舐めて過ごすよ。