なにごともなかりし日。『さよなら、僕のマンハッタン』観た。うまくいかなさそうな恋愛に悩む無難な青年の隣室に、よくわからない男性が越してきて、そこから物語が動いていく。もつれていく人間関係を描いているのかな……と思いつつ観ていると、最後に、絡まった糸がするんと解けるような展開を見せた。しっとりした印象の残る映画で、画面の色作りも似合っておりよいなあと思う。夕餉のあと、じぶんは辺境やフロンティアで暮らしたい、見て回りたいのではという思いがよぎり、こういうときはこの作家かなと、積ん読の棚から星野道夫の文庫二冊とジェーン・グドール『森の旅人』(上野圭一訳、松沢哲郎監訳、角川21世紀叢書)を取り出した。それまで知らなかったのだけれど、『森の旅人』をぱらぱら開くと星野道夫撮影の著者像が載っており、びっくり。本の方がこちらを招いたり、機が熟したときやっと背表紙に呼ばれるようなことが、読書のうちにはときどき起こる。おそらく取り出した数冊はいまが読みごろ。北海道の広い大地もいずれまた巡りたい気がしている。いまは行ったことのない場所の優先順位のほうが高いけれどさ。辺境を見て回りたいことと、巡礼するような旅をできたらということ、そうした思いがなんとなくある。