宵のころ、燃えるごみをステーションへ出してから近所を一周してきた。日曜夜の家々からは緩んだ独特の雰囲気が伝わってくる。家族同士の会話や水道管から響く流れなんかが、オレンジ色の明かりと一緒に道へ漏れ出していた。ウマオイが鳴くすいっちょんという声をはじめ、そこかしこからいろんな虫の声が聞こえる。路上を照らすとナナフシやカマドウマが歩いていたり、木の上のほうには青いあけびや小さな栗のいがが生っているのを見かけた。戻り道、ぼんやりと、でも濃いオレンジ色をした月が、空の低いところに浮かんでいるのが見えた。よい晩。夏の夜のまろやかな大気が肌に柔らかく触れて気持ちよかった。