久しぶりに道の駅の産直を覗いた。冬の終わりは作物のバリエーションが単純なため、ふらっと巡ってすぐに出てきた。それから図書館へ向かうと休館日。部屋の壁に図書館カレンダーを貼っておきながら、こういう日に限って確認しなかったのだった。そんなこともあるよ。買い物を済ませてうちへ戻り、外の物置から人形ケースを運び出したり、掘り返した場所の整地をしたり、鎌を砥石で研いだりクレマチスの誘引などを、日が傾いてくるころまでやっていた。『イル・ポスティーノ』を観た。亡命中の詩人と郵便配達人の交流を描いた作品。せりふはそれほど多くないけれど、交わされる言葉や思いは豊かだった。詩人ネルーダが島を去ったあとの郵便配達人マリオが、残されたレコーダーを活用してメッセージを吹き込みながら語る「あなたがいなかったら詩など書かなかった」という言葉が、混じるものなく美しかった。友を失った詩人の顔に浮かぶ一瞬の微笑みと翳り、そして呆然とした表情のまま思い出多い断崖の下へ立ち尽くす姿に、明るい音楽と相まって、悲しさへうまく接続できない痛みを感じた。このラストシーンの日差しの明るさや寄せては返す波の静けさは、地中海の小島のそれなんだろうか。感情がひとつにまとまらずに終わる、じんわり目が滲むよい映画だった。