そういえば六月になってしまった。過ぎていくのが惜しいくらい麗しい月だから、いっそ始まらなくてもよかったのに。梅雨入りって、照明が突然ばちりと落ちて薄暗い廊下に出るような、あるいは生活空間がとっぷり水没するような感覚がある。これが七月に入ると、チューニングがずれる感じがあり、僕は僕で春先からの体力が尽きるころでもあるため、外気を味わう余裕は薄れていく。
同じ空間にすいかずらが咲いているおかげで現在、闇が例え無しに甘い。それでなくても夜道は甘いにおいがする。来年は小くちなしにも甘い香りを提供してほしい。花芽の仕込みは春から始まっているらしいから、とりあえずの目標は枝ぶりを充実させることなのだろな。それからくちなしには夏場、オオスカシバが産卵しに来るとのことで、今月末辺りオルトラン粒剤を与えられたら。日暮れごろ来た夕立はいまは止み、ときおり雷がステレオで鳴り響いて、雨脚が静かに戻ってきた。