クローゼットの収納に手をつけ始めた。ボール箱をもう少し高く積めるようにして、使わないものを効率よく仕舞い込もう。祖父が置いていった電動ドリルで樫のほだ木に穴を開け、クリタケの菌駒を打とうとしたところ、一本全部に穴を開けたところでドリルからビットが外れ、木の幹深くに潜り込んでしまった。あー、僕はこういうへまをするやつだったか……。祖父が使っていた菌駒用の木工ビットは根本が丸軸という形状をしていて、これだといくら噛み合わせをきつくしても負荷が掛かれば外れるよねえ、なんて訝しんでいた矢先だった。ホームセンターで六角軸の菌駒用ビットを買ってきた。これなら外れることはないはず。一度は埋まった刃を取り出そうとほだ木をのこぎりで切り出したのだけれど、二度目でもういいよ、という気分になった。樫の木はほんとに堅い。夕暮れの空は淡く限りない階調の中に緑の領域を宿していた。三月の日没には繊細な緑色が出ることがあり、今日がそういう日だったみたいだ。自然や気象を相手にするのはいいかもね、と思う。