2020年11月6日(金)

『グリーンブック』を観る。先の『最強のふたり』関連のおすすめとして友達から教えてもらった映画。あちらは裕福な障害者の白人とスラム出身の黒人という配役だったけれど、こちらはピアニストの黒人とがさつな用心棒の白人という、全く逆の構成になっている。視聴し始めた当初は白人向けの「大切なものを教えてあげる」という作品なのかとひやひやしていたのだけれど、徐々に黒人への差別を含めた、さらにセクシャルあるいは普遍的なみんなへ向けた抵抗としての、ドンとトニーの双方向に変化がもたらされる作品だと思ってからは、その勢いに飲まれていた。後半で警察からの不条理な言いがかりを切っ掛けにふたりが留置場へぶち込まれる場面があり、ドンの「暴力では勝てないぞ、勝ちたいなら品位を保て」とトニーの「俺ならそいつ(留置場のベッド)には触んないね」に、今の世と繋がる凄みを感じた。大きな時代性に抵抗していても、それらの尊い記憶として継承されるのは、わずかな個人間の信頼だけなのだ。ものは言い様だから絶望かもしれない。小さく確かな入り江、景勝地、緑の谷、そういったものが限られた人々の記憶に残り、いつしか失われていくんだろう。それらが存在することをただ知っていたい。そして、いずれ大きな流れが変わっていくのなら、その河へしれっと合流して未来を託していこう。そういうことを思う映画だった。

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