久しぶりに星が出てる。土と樹がむせるように香る。有るか無きかの夜霧。
叔父の法要おしまい。従弟から婚約を進めているという彼女を紹介され、慌てて挨拶した。このごろ人生が奇妙でわけの分からないものに思えることがある。クラフト・エヴィング商會の作品に登場する「ロンリー・ハーツ読書倶楽部」を思い出す。ここに入部して、世界中に蔓延した悲しみを理解するとき、かすかに鼓動する「おかしな本棚」へ辿り着くという。僕にとって悲しみはまだ、幽霊か岩のようにそこにあるだけのものだなー。
今年のダージリン夏摘みは職人によって精度の高い製茶がなされているという話。紅茶に限らずお茶界隈はずっと追い風のようで、最近では春摘みや烏龍茶といった淡い香りに注目が集まっていると聞いた。お茶に関心を持った初めのころは、夏摘みのマスカット香にひたすら感動していたものだけれど、今となっては僕も淡い香り、その中でも青い草原の香りが好ましいなあと思う。そういえば日本茶の蒼風を少し前に飲んでいた。草原の青さとは若干毛色の異なる、でも色彩を持ったよい香りのお茶だった。