市場を覗いたついでに祖父のところへ寄る。買ってきたぶどうを一緒に食べつつ近所の観楓スポットの話をすると、彼には珍しく「見に行ってみるか」という。ので、昼餉ののち、御殿山へ向かった。祖母と桜を見に来たことは近年にもあるそうだけれど、この時期にここの紅葉を見に来たのは小学生以来で、七十年ぶりくらいと言う。いまは銀杏が葉を落としつつあるころで、木々も色褪せ散り始めており、祖父は「来るのが少し遅かった」などと言った。軽くあたりを覗って引き上げる感じかなーと思っていたら、意外なことに祖父は、紅葉を背に自分を撮れと言う。慌てて数枚ぶんのシャッターを切った。家に戻ってからカエデの植え込みを背に、更に数枚撮る。彼は「お前に(カメラで)写真を撮ってもらうのは初めてだ」などと話していた。写真嫌いな祖父なりのサービスなのかも知れない。僕としては、撮れと言われて即座に「これは遺影候補かもな」ということが脳裏を掠めた。だとしたら準備もなく広角で人を撮って大丈夫か。それからお茶を飲み、桜のほだ木の話などをして、帰途。