2019年10月31日(木)

Netflixでマイリスに入れていた『アメリ』を観ていた。流石に芸能音痴の僕にもアメリ・プーランの吹き替えは林原めぐみさんと判別が付くな……。作中の、しばしば現実と想像との境界が溶け落ちるところに、最近読み終えた岸本佐知子さんのエッセイと近しい雰囲気を思った。また、決まり切った生活が些細なことで崩れていく感じは、どこか八十日間世界一周のよう。外界とうまくやっていけずに、ともすれば計算高くさえなりそうな主人公アメリに対して「それはそうなるでしょうよ」という思いも若干ありつつ、奇妙な縁によって交友を持った隣人『ガラス男』レイモンの存在が、ラスト間近で大いに助けとなった。作中で描かれる類の理不尽さは個人的に身に染みて知っている部分もあるけれど、この作品では人々のあいだにある距離感が不思議なやわらかさを保ったまま描かれているように思う。あと、金魚を捨てるのに金魚鉢まで捨てていたのはいいの……。見終えてからのWikipediaに「映画の中でアメリの部屋に飾ってある絵のほとんどが、ミヒャエル・ゾーヴァの作品である。」とあったのが目にとまった。その人ってたしか、吉田篤弘『針がとぶ Goodbye Porkpie Hat』(新潮社)の表紙に採用された、海と焚火とペンギンのイラストを描いた人物だったはず。いま検索したら「Goodbye Porkpie Hat」は怒れるジャズマン、チャールズ・ミンガスの一曲だとか。

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