2023年7月17日(月)

きのうきょうと一泊二日の小旅行へ出かけた。その名前ばかりは耳にしていた金精峠を通ることをメインイベントとして、群馬県の旅館に泊まる旅程。日光を通り抜けていろは坂を登り、中禅寺湖畔から戦場ヶ原を横目にひたすら上を目指す……と書くと簡単だけれど、それなりに大変な箇所もあった。そもそもこの日程にしたのはウェザーニュースの週間予報で雨予報がなく、降水確率も低めだったから。それでも直前になると、日光市では昼過ぎから夕立らしき傘マークが並び、ひとまずそこを早めに抜けて安心したかった。考えてみたら当たり前なのかもしれないけれど、その日は夏本番の連休の中日であり、絶好のお出かけ日和。東照宮前の赤い神橋周辺には車の渋滞ができていた。気ばかり焦ってももったいないから列が進むのに任せていた。このあたりからライダーの人々をたくさん見かけるようになる。東照宮前の蔦で覆われたローソンはたぶん有名なのだろな。原付で上るいろは坂はどちらかというと難儀したけれど、ギアを低く入れると思いのほか流れについて行けるものだし、後続車両に道をゆずるのもそれなりにスムーズにできた、と思う。自転車で上る方々(個別に複数)もいて、個人的にはそちらのガッツにびっくり。坂をほとんど登り切ったところにある明智平では、これまでの人生でいちばん多く、バイクとライダーたちが駐車しているのを見た。これも当たり前なのかもしれないけれど、皆さんでっかいバイクばかりですね……。自分のような原付の姿はぱっと見、見当たらなかった。それは自分が好き好んでのことだからよしとして、もっと上の中禅寺湖へ。湖畔沿いの道路はどこを向いてもしゃれた観光客と車両に溢れており、見た感じ海外からの旅行者かなという姿も多く、名にし負う観光地の暴力みたいな印象を受けた。栃木県民だけれど、日光ってすごいんだね……。それはともかく、そのあたりでのんびりする理由も特にないから、湖畔の国道120号線を上へと向かう。中禅寺湖畔はどこか磯じみたにおい、雨後のゲオスミンぽいにおいがするのがおもしろかった。戦場ヶ原の三本松茶屋では原付を停め、湿原をひと目覗っておこうと最寄りの展望台へ向かい、写真を少し撮った。きっと木道を入っていけばこの湿原に見るものは多く、楽しいのだろうね。いずれ余裕を持ってここを歩きに来たいなあ。そこからさらに上へ。トランクケースのようなちまっとした原付(たぶん)にまたがり道を行くひとを見かけ、元気をもらったり。二日間の道中で原付らしい移動者を見たのはあれきりだったかもしれない。近くに湯本があるためか硫黄のにおいと、それに背の低い笹藪から流れるお茶のような香りがした。そしてうねうねした上り坂のすえ、とうとう金精トンネルへ。それほど広くもない駐車場は車両で満杯だった。どこにひとがいるのか見えないけれど、もっと上の金精峠や周りの山域へ登っているんだろな。あたりの山々はところどころで赤茶けた岩盤が剥き出しになっていたりと、険しい地形が見て取れた。自分がここへ来たかったのは、天文情報を漁っていると金精峠の名前をときおり目にするからだった。車でアクセスできる関東屈指の高所だから(なので星見にも適してる)、という理由だったと記憶してる。今回は通り過ぎるだけではあるけれど、こんな高い場所にまで自分でも来られるんだなー、という感慨はそれなりに。時間の配分的にはまだ正午まえで、宿のチェックインまで時間は思いのほか余りそうだった。なにはともあれトンネルを抜けて群馬県へ。峠を越えたあとはほとんど下りで、しばらく行くとキャンプ場があり、そこかしこに車が止まっていた。お昼ごはんたべようかと自分も原付を止めて、適当に脇の林内へ踏み込み、かばんのぬいたちと一緒にしばしぼんやりしつつおにぎりを食べる。これだけ標高が高いと戦場ヶ原の辺りの雑木林や落葉広葉樹林からさらに植生が変わり、林床の見通しのよい針葉樹林が広がっていた。気持ちよく歩けそうでうっかり奥へ入っていきたくなるね……。ほどよく休憩してからはまた道をひたすら下り、まっすぐに「道の駅 尾瀬かたしな」へ。ここからあの有名な尾瀬へ向かうこともできるんだなーと思うと意外な気がしたけれど、今回は物産館のほうに興味があったので、そちらをうろうろ。珍しそうな地ビールを少しばかり手に入れた。宿のチェックイン予定時刻まではまだ三時間ほどあって、べつにそれを律儀に守らなくてもよいのだろうけれど、せっかくだから喫茶店で本でも読もうと最寄りの「フレディー」へ。見晴らしのよい立地にある、静かな喫茶店だった。青いソーダフロートを注文して持参した椎名誠『あやしい探検隊 バリ島横恋慕』(角川文庫)を読む。この本はもう何度か読んでいるけれど、なぜか旅先へ持っていきたくなるような旅情があるんだよね……。一時間ばかり過ごしてお店を出、素泊まりの予約を入れてある老神温泉「湯本 楽善荘」へ。好ましく静かなところだった。チェックインと部屋への案内を受けてから荷物を運んだり、気が抜けて部屋のソファでごろごろしたり、ぬいたちと窓から温泉街の様子を眺めたり。夜になると暖かな照明でそれぞれの旅館や道路が照らし出されるのが綺麗だった。日付が変わるまえに就寝。

二日目。早々と目が覚めて、そうだ朝風呂に入ろうと五時前に浴場へ向かった。ら、すでに先客が湯に浸かっており、あとから親子連れも入ってきたり。個人的に自分の裸を見られるのは苦手なのだけれど、こうしたときは気にしないほうが気楽かなと思い、熱いお湯に脚を延ばして浸かっていた。戻った部屋では軽くストレッチをしたり、行き先の天気予報をチェックしたり。やっぱり日光市が昼過ぎから夕立らしく、その前にそこを通過するつもりで荷造り。七時頃にチェックアウトして温泉郷をあとにした。そこからは赤城山と皇海山のあいだの山道を縫うように走る。よく晴れた夏の朝であり、まだ気温の上がっていない大気は肌に心地よくて、降り注ぐ木漏れ日のもとを行くのは余計なことを考えられないくらい幸せだった。やがてわたらせ渓谷鐵道沿いに北上。途中、草木湖のほとりの富弘美術館へ立ちよった。月曜は休館日だと思っていたから施設の外観をスマホで撮るだけのつもりだったのだけれど、窓口には受付の方がいて、祝日の関係でその日は開館しているとのこと。せっかくだから入ることにした。作品の展示を前にするうち意外なくらい見入り、特に順路の終わりのほうにあった「貧乏くじ」という作品は、これを見ることができてよかったと思えるものだった。売店でポストカードのセットを二つ購入して美術館をあとに。そこからは迷うこともないような一本道を走り、活きのよい雲が徐々に増えてくるのを確かめながら日光市街へ。連休三日目の祝日だからか、道の両脇は観光客でごった返していた。日光って自分が思っていたよりずっと強力な観光地だね……。渋滞の連なる市街を抜けてからはひたすらうちを目指し、途中でスーパーに立ちよったのち、帰着。

一連の行程を忘れたくなくて書き出していたらむやみと長くなった。文章的におかしなところがありそうだけれど、もう遅いからこれくらいにして眠ろう。

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