2020年11月10日(火)

『ブレードランナー(ファイナルカット/字幕版)』観た。『アンドロイドは電気羊の夢を見るか』を先に摂取していたから、この作品はもう抑えてあるけれどまあ評判がいいから映画も、という気持ちで望んだのだけれど……幻想的な雰囲気に心地よい高揚感が相まって、一生忘れないだろう作品になった。雨降る屋上のあの悲しみを上回る美しさと、そこからなだれ込んでいく引きの場面の高揚感に、すっかりこちらの気持ちは持っていかれた。物語のしんがりに壮大な背景がちらっと登場するのってたまらない。そしてところどころ振り返ってみると、ロイの言動のニュアンスが変わる。たとえつくられた存在であっても、仲間を思い生きたいと願うのは、人間と同じじゃないだろうか。デッカードはレイチェルに歩み寄ってしまうし。ロイ(たち)は辺境へ連れて行かれ、そこで恐怖に耐えながら信じられないようなものを目の当たりにしてきたわけだけれど、そうした者たちが「感情を持つと面倒だ」という理由からあまりにはかない寿命を施されていることが、とても悲しい。そうした彼が見せた微笑みの尊さもよかった。この何ヶ月かで映画を観るようになった理由は、自分の集中力が鑑賞に堪えられるようになったからなのだった。映画っていいなあ。こんないいものにいままでさっぱり手を付けなかったのはまあしょうがないものの、時間の流れの奥行きを圧縮して名作ばかり味わうという意味では、とてもリッチな体験をしていると思う。今年の春先に始めた往時の名盤漁りもこんな贅沢さだった。作品と向き合える準備ができていると、感動は心へ届くものだね。明朝は0度近く、木曜の朝は氷点下になる予報が出てる。

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