八月。
チタケが見たくて山へ向かった。Google Earthに植生図を適用して木々の生え方を確認していたから、特に悩むでもなく適当な上流部へ向かう。渓流沿いに家族連れのテントが二、三張られているような遊歩道に目星を付け、一時間ほど歩いただろうか。普通の雑木林に見えるそのあたりで、真っ赤なタマゴタケ三本と、なんらかの黒っぽくがっちりしたヤマドリ系を二本見つけた。後者は同定するだけのつもりだったからよいとして、タマゴタケ……たまたまあったにしても、生えているものだなあ。でかく真っ赤で存在感があり、ある場所では四本くらいまばらに集まっていた(虫に食べられたのや崩れたのもあった)。ほか、小さく謎なきのこはいくつも見かけたけれど、どういう分類になるのか見当の付かないものばかり。○○のなかま、くらいには特徴を引き出せるよう、図鑑をもっと読み返しておこう。きょうは出たとこ勝負でやって来たため、空振りにならなくて本当によかった。
晩ご飯。タマゴタケは塩水で虫を出したのち、塩コショウと小麦粉を振ってバターで炒めた。おそるおそる食べると、うまい! なんだろ、このうま味の強さは。バターの風味が乗っていることもあるけれど、こってりかつくどくない。香りをもっと味わえばよかった。柄は炒めてもしゃきしゃきしていて歯ごたえがよく、こちらも美味しい。これを書いている現時点で身体に変化はなく、もしも同定が間違えばなんらかの苦しみをきのこ三本ぶん味わうのだろうか、なんて緊張は杞憂に終わったみたいだ。探せば見つかるうまいものが一つ増えた。いちおう書いておくと、この辺りでは野生のきのこ(山菜も)に対して出荷制限が掛かっている。僕はもっか、自分で採って自分で食べるぶんには許容してしまおう、という方針だなー。
きのこを探す上では木の種類を見分けることが大切だと実感した日だった。いずれは、特定のきのこ(ほとんどチタケのこと)を狙うならこの辺りというふうに、歩留まりのよい探索が出来るようになれたら。