イナカの灯台

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2019年5月

2019年5月1日(水)

湯船の中で日付を越えた。デスクトップの右下に表示されている「令1」はいずれ慣れるんだろう。

わらび餅を持って祖父宅へ。畑の畝のマルチ掛けを手伝ったり、池を埋めたり。新年のノリで様子を覗いに行ったのだけれど「(元号が変わっても)関係ないだろう」といつもの様子だった。帰り際、雨に降られる。

2019年5月2日(木)

先に桜を見た丘の辺りでアミガサタケ探しをするも見つからない。その後ホームセンターを二件回り、園芸コーナーで面白そうな苗を見て回った。初めて目にした一粒きゅうり「プチキュー」が目にとまって二ポット購入。それから、庭の三箇所にボリジの種を蒔いた。

キャラクターものだからたいしたことないかもね……と思いつつも使ってみたムーミンの入浴剤が、意外と好ましい香りだった。僕がさっきまで入っていたパパ柄の「海のオーケストラ」がそれで、マリンの香りだそう。極端な香料のにおいはしなくて、ほどほど。ほかのコケモモのやしらかばといった入浴剤も使ってみたいと思ってる。

なんか今日は疲れた。早めに布団へ移動してしまおう。

2019年5月3日(金)

例の鳥らしきほうほうという声が聞こえる。

母とうつのみや緑花木センターへ。園内をじっくりと巡って目ぼしい植物を狙う。僕は前々からシュウカイドウが欲しかったのだが、どうも苗が見つからず、最終的にベゴニアの赤/ピンク/白を一つずつ選んだ。この植物全体の光沢感や、水気を含んでぼってりした感じがいいんだよね。帰り道、直売所にて母が黄花ツツジと薄紫のツツジを購入。今日は終始上天気で汗ばむ陽気だった。

2019年5月4日(土)

石油ストーブをやっと片付けた。夜はつま先が冷えるからルームシューズはまだ使ってる。

明け方に、延期が重なっていた民間ロケット「MOMO3号機」の打ち上げがあり、その成功の始終をネット中継で見ていた。頭上の宇宙開発に興味を持つようになってから、堀江貴文さんへの印象が変わっていった。二度の失敗もあったロケット開発の資金繰りと広告塔の役割を、時には記者会見で矢面にも立ちながら支えていたからだ。インターステラテクノロジズ社は四年後に衛星ビジネスへ参入するつもりがあるとのことだったけれど、その現場での堀江さんは信頼できる人だ。自分が恥ずかしくなるから、もうほりえもんなんて呼ばないようにしよう……。

道の駅へ。フリマが通常の二倍の数の出店をしており、施設内を往き交う人足も混雑していて、普段の土日よりずっとハレの気配に満ちていた。

以前から気になっていた、地域密着型らしい鮮魚店へ入ってみた。貝類と刺身が充実しているようで、小さな売り場に潮の匂いが漂っている。おかみさんが相手をしてくれた。人気と札のあった、まぐろを煮こごりのようにしたのが美味しい。予算を伝えれば刺身の盛り合わせを作ってくれるとのことで、そちらもいずれ利用出来たら。

共同の水源として地下水を汲み上げて使っているこの辺りでは、今年に入ってから断続的な取水制限のため、水が使いづらくなってる。雨があまり降らないことが制限を設けている原因なのだけれど、途切れ途切れに二十年くらいのここでの暮らしで水に困ったのは、震災でポンプの電源が途絶えたときのほかには無かったことのように思う。今年はかなりな小雨なのだなー。にわか雨や夕立がいくら来たところでこれは解決しそうにないから、雨よたんと降れ、ねちっこく降れ。

2019年5月5日(日)

愛について深く知る必要はないだろうか。聖書ってどのへんから手を付けるものなんだろう。

午後、ベゴニアと一粒きゅうりを同じプランターに定植した。あとで蔓を誘因するためのネットを買ってくる。白毛のほうのアーティチョークは全く展開が遅くて、もしかしてこっちの花芽が出てくるのは来年からかなーと思う。

NHK総合のムーミン特集をちらと見て、BS4Kでの本放送も少しだけ知ることが出来た。全体的に声優さんたちの声のトーンが渋め。それから、あまり心配していなかったこととして、登場人物の造形や動作が別段バタ臭くない。いいんじゃないかな、よそで放送されたら通して観てみたい。

いまくらいの時期にはくちなしの花が咲いていて、先日の園芸店では身体が痺れるほど甘いその香りを、鉢植えから直に嗅いだりしていた。庭の奥にもくちなしの痩せた木があるはずで、来年くらいを目標に、そこから花を嗅げるよう手入れしても良いかも。

2019年5月6日(月)

立夏。五月の、梅雨前のからっとした気候がずっと続けばいい。それは叶わないと知っているから、せめて長く続いて欲しい。

Florence(フローレンス)――ありふれた恋の物語についてを読んでプレイしていた。場末のサイトだからネタバレしたって構わないと思うけれど、別れた彼氏から貰っていた水彩のパレットを思い出し、それで試しに絵を描いているシーン、そこでうるっとしてしまった。僕が必要としているのは取り戻すという行為なのではないだろうか。

2019年5月7日(火)

寒気が南下しているそうで妙に寒い。明朝の霜を避けるためベゴニアのプランターを取り込んだ。

2019年5月8日(水)

歯科にて、歯も歯茎も前よりとても綺麗になりましたね、と褒めて頂いた。一昨年の秋まで煙突してたからね……。

TSUTAYAに立ち寄って三浦しをんさんの『ビロウな話で恐縮です日記』を手に取る。最近アンテナが延びた平松洋子さんや梨木香歩さんの本も見かけたのだけれど、積ん読を思い出したら今はいいやという気分になり保留。ちくまで知った岸本佐知子さんの本は見かけず。このところ椎名誠氏の古いエッセイを週に一、二冊のペースで読んでる。吉田篤弘氏の作品は少し休もうという気分でいる。あのTSUTAYAは文庫を全て作家別・あいうえお順に陳列していて、思い切った見せ方で良いねと思った。ひいき目込みでいうと、SFと岩波文庫はレーベルで展示してくれても良かったなー。

2019年5月9日(木)

事件や風潮に機会を得て義務感や怒りを発散するのは良くないなと思う。消費され傷つけられて忘れられるひとがいることを思ってなお、言及しなければならないことって、あるだろうか。同時に、不条理さに怒るのは筋が悪いとも、どうしようもないとも思う。

祖父の畑に除草剤を散布していた。噴霧器のノズルを振り回すにあたって思いのほか筋肉を使い、腕がしばらくぷるぷるしていた。祖父と、五月に入ってから来た昨日の遅霜や、蛍が近場に出る話なんかをする。昼ごろ太陽にハロが見えていた。

やっぱりなにか撮るんなら、マジックアワーとブルーモーメントの時間帯が一番きれいに写るなー。朝夕の影が失われる時間は光が拡散性になっていて、ものの姿がやわらかに浮かび上がる。

2019年5月10日(金)

ブルーチーズがその強烈な刺激臭を上回るうま味で脳の感覚を塗り替えていく様子に、ひとりで薄ら笑いを浮かべたりしていた。こわい。でもブルーチーズの味わいは深くたくましく、味と紐ついてしまえばカビの香りも心地よくて、美味しいものが一つ増えた。唐突にものを単品でもぐもぐやり出すのはいかにもな独り身らしさだ……。

2019年5月11日(土)

科学の知見が増えると超拡散状銀河や低表面輝度銀河とか、知らなかったものがいろいろ出てくるなあ。一昔前には楕円銀河や渦巻き/棒渦巻銀河くらいしかなかったように思う。

昼下がりに道の駅のフリーマーケットへ行き、とある店主に掴まって少し話をする。衣類の紹介のほか、ぬいぐるみもあるよ、どんなのが好き? と訊かれ、こういうのですねとプレイしていたポケモンGOを見せると、そんなのないよー! と笑いながらの返事。なんか元気な方だった。

その後母と、がんで入院している叔父のところへ見舞いに向かった。想像してはいたけれど、叔父は細く痩せて臥せっていた。去年亡くなった祖母の元から見つかった古い写真を回し見しつつ、しばらく世間話をした。先の連休に叔父は一度自宅に戻り、家族や孫と団らんのひとときを過ごしていたそうだから、その機会があってよかったなと思う。

庭のクレマチスは花保ちがよいようで束のようになっており、やはり日暮れにもう一度その姿を撮っておきたいなーと思ってる。

2019年5月13日(月)

ばね指を抱える美容師さんの代打で住宅地の公園の草むしりをする。芝と白詰草が絡みつき踏み固められて融合しており、たかだか二畳ちょっとの区画をひとりできれいにするのに四時間かかった。正直いうと割に合わない。手作りおにぎりの差し入れがあった。

敷き布団カバーを麻製のものに交換した。これからの季節は肌触りがいいんじゃないか。

2019年5月14日(火)

宵のころに驟雨。大気が適度にやわらかい。奄美地方で梅雨入りとのことで、いよいよ梅雨前の過ごしやすい気候を今のうちに味わっておきたいところ。

2019年5月15日(水)

山桜の青葉や柿の木の新緑がきれいだ。

しばらく前にここに書いた不満ごとは、先の大型連休のあいだに自分の思考で分解し、おおかた片付けていたのだった。ばらしたら思いがけないものが出てきた感じもしたし、それはありがちでしようのない話でもあった。この話を経験の広がりに置き換えていこう。

育てているつもりでいたアーティチョーク二種類のうち片方は、全く関係のない違う植物らしいことが判明した。こういう植物を育てることが初めてではあったし、なんか互いに似てないよねともここで書いてはいたけれど、そんなのありかー。残る片方は紛う方なき本種で救われてる。種は余っているし、いまが蒔き時だから、またしぶとく蒔くべし。今回みたいに園芸で取り違えをするとけっこう情けない。

2019年5月16日(木)

なんとなく過ごしているいまのこの気候はとてつもなく好きだ。

2019年5月17日(金)

ヘッダの背景を庭のクレマチスに挿し替えた。

きょうは屋外の風がむっと温かくて、ああもう季節は晩春というより初夏なのだなあ、梅雨が来たら梅雨もいいというのだろうなあ、なんて思う。

2019年5月18日(土)

朝から祖父の要請で畑仕事の手伝いをしていた。亡くなった祖母のところてん好きは僕に遺伝しているのでは、みたいな話をしたり、コンビニくじで当たったゼリー飲料を祖父が初めて飲んでみたり。今年はトマトに力を入れるとのことで、大玉トマトの株が畑に八本並んだ。

2019年5月19日(日)

明日から強めの雨が降るとか。水源が潤うといいなあ。

リーフルの春摘みダージリンがだんだんに入荷されてきているのをウォッチしてるのだけれど、ここ、こんなに初物を仕入れていたっけと驚いてる。そういえば最近のお茶のトレンドは春摘みや台湾高山茶の淡い香りに傾いてきてるって話を読んだのだった。

茶葉の商品紹介や解説って「果実のような」とか「花のような」とか、なんかふわっとしたイメージの羅列に読めそうなものではあるんだけれど、あれは茶葉の特徴をわりと詰め込んだものになっている。例えば僕の求めて止まない草原の香りなら、コピーに「青い」という言葉が入ることが多い。お茶に限らず(知る範囲ではお香やコーヒーも)香りというのは、この表現が入るならこの香りがするというように、けっこう定型的な言葉で表されているようだ。

2019年5月20日(月)

方々の畑の麦が色づいてきており、麦秋が近いのだなと思う。今夕から明日昼にかけてまとまった雨。雨のにおいはいいね、しっとりとして気分が落ち着く。空気が甘く匂うのは花だろうな。

2019年5月21日(火)

明日からしばらく高温の日が続くそう。

以前に比べて、なにかを待つ時間がそれほど耐え難いものではなくなってきた、ように感じる(当社比)。例えば、ひどい不眠と共に過ごすかつての夜はじりじりして長かったけれど、いまや闇は愛おしいものの一つだ。じっくり本を読むための夜更け48時間分とか、朝を迎えたくない人のための闇の底一週間分とかを、いつでもどっぷり浸れるように用意していたい。手持ち無沙汰なときたばこに頼らなくなったことや、歳を取ったこともこのゆとりと関係があるのだろう。

2019年5月23日(木)

ポケモンGOにて、やっとカイリキーを図鑑に登録した。画面が全体的にムキムキしてる。

例年のようにかじり読みしている『楽しいムーミン一家』が今年もいっこうに進んでいない。愛おしいやらもったいないやらで毎回本の初めから手を付けるのだけれど、二章最後のあの、闇を抜けてしらじらと夜が明けていく声もない時間を想像するあたりで、たいてい至福に眠くなって本を閉じてしまう。春先からそういうことを繰り返してる。八月の末にはしれっと読み終えているから、心配してはいないんだけれどね。三章の終わりには、大夕立の向こうで遠い世界の鐘が鳴り響く、この本でたぶん最も予感と幻想が閃く場面があるのだ。そこの季節が現実と重なるように読み進めていよう。踏み慣れた道を繰り返し行くのはトフトのようだ。

2019年5月24日(金)

SpaceXがこのたび打ち上げたスターリンク衛星のリプレイ動画を見ていた。あの積み重ねた什器みたいな衛星が宇宙でどう放出されて展開するのか、一度に60機も上がったそうだし見物なはずと思ったのだよね。でも、youtubeに載っているのは打ち上げから回収までの、衛星よりも下部の中継のみのようだ。衛星自体の諸元はホールスラスタが用いられていたり、いずれ宇宙空間でのレーザー通信が予定されていたり、とても先進的なことをやっているのだなあと薄ら思う。こういうのがこれからどかどかと打ち上がるのかー。

あんまり脈絡がないけれど、日本の最新の宇宙開発についてはISASニュース|宇宙科学研究所に掲載されている月刊の広報誌(PDF)が情報量が多い。インターステラテクノロジズの堀江貴文氏もメルマガにロケット開発のコラムを設けているそう。

絶賛晴れまくりなこのところの気候は、ひとまず日曜まで続く予報になってる。フリーマーケットをやっている場所を新たに確認したし、気分次第で覗くことが出来たら。

2019年5月25日(土)

道の駅のフリマから帰ってきて、僕には珍しく昼寝。今日は真夏日の場所がずいぶんあったらしく、サーキュレーターの風がうっとりと心地よく肌を撫で、起きてみればもう青い闇が降りていた。今夏は天候不順かもとか。

昨日書いたスターリンク衛星に関しては、隊列になりながら空を横切っていく動画をTwitterで見つけた。なるほどああいう感じに見えるのかー。これから徐々に衛星間の距離を取っていくのだな。

新しいカメラのボディが欲しいなーとぼんやり思う。現在使っているPENTAX K-50は、2014年に型落ちで購入した入門者向けのデジタル一眼で、電源に単三電池を四本使うレトロぶりをしている。ペンタックスを抱えるリコーは、同ブランドのリース期限が迫るとかでめっきり開発に力を入れていないけれど、次期のAPS-C機そのものはいずれ、という話を聞いてる。おかげでボディ貯金をする余裕がある。こつこつ貯めよう。

それから、写真に思想を持ったほうがいいのかなあと軽く揺らいでる。初めは野外へ出掛けていくための趣味だった。今でも第一にそれがあるし、単純に楽しいと思える姿勢でやって来たから、写真趣味がここまで続いてる。でも、もう少し上達を目指すのもありだ。上達というのは技術もだけれど、撮ったものに通底しているものの見方が、ということ。たぶん、日ごろなにを見てなにを感じているのか、それを常に言語化していったり、自分に問いかけていけばいいんだと思う。

2019年5月26日(日)

那須野ヶ原公園のフリマを覗いた。道の駅のフリマに比べると店主たちの年齢層は若め。周囲をふらふらと見て回り、木村弓『千と千尋の神隠し』と柴咲コウ『かたちあるもの』のCDやシャツを買う。今日は各地で猛暑日という、五月ということを抜きにしても記録的な暑さで、そのため公園を訪れる人足が鈍ったのではないだろうか。ともあれ、足繁く通う道の駅では見ることのない掘り出し物があるかもと、僕にしてはくまなく出品を眺めたのだった。本やCDは持ち主の関心が分かるところが面白かったなー。

夕暮れから夜にかけての気温の落ち着き方が夏のそれな日だった。まだ梅雨入り前で空気は乾いているし、空は終始好天で、なにをするにも過ごしやすい日ざかりの季節。これが梅雨に入ると、生活空間がとっぷり水に沈んだようで、どこか籠もって照明も落ちた感じがするからまた好きだ。この時期の夕暮れには青い時間が長く続く印象を持っている。家並みの黄色い照明とその眠たい青の対比に、すうっとため息が出る優しさを感じて、いい季節だな、と思う。

2019年5月27日(月)

七月を思わせる強い陽射しの中、伊王野の道の駅へと原付を走らせていた。信号のない長い田舎道は風が心地よく、田と山の続く風景は緑の発色が鮮やかで、そこをひたすらのんびりと行く。道の駅の園芸コーナーでは、鉢植えの幾つかが土を湿らせつつもくたっと萎れており、こんな日だからビニール屋根の下程度では土が煮えてしまうのかもなあ、なんて思う。丁子草の灰青色がとても綺麗で、こうして名前を覚えたりもした。これからしばらく降水確率が若干高めなため、今日は日光を強めに浴びておいたのだった。

冷風が出ないエアコンのフィルターを試みに掃除した。確かにほこりがへばり付いてはいたけれど、この部品で影響が出るものだろうかと再度スイッチを入れると、夏を越せる冷たさの風ががんがん吹き出た。ありがたい。エアコンのフィルターは小まめに掃除するべきなのだな。

2019年5月28日(火)

軽い頭痛。

2019年5月29日(水)

こうして日記を付けるのはわりと楽だ。その日あったことを好きな順に記述してるだけだし、慣れると自分のテンポみたいなのが分かるから、書く燃費が向上するに従って面倒くささが減る。もっと面倒な日は一行だけだったり、書かなくていいよということにして、それなりに続いてる。

でも、もう長いこと創作を気ままに書けていない。今のところ理由の仔細を書くつもりがないため思わせぶりな文章になるのだけれど、雑にいうと内面が不安定だった時期があり、いまは寛解への長い途上だ。そうして、こころが安定してくるにつれて、想像力はいつしか日照りの川みたいに干上がっていった。こういうふうに創作が止まることはちらほら聞かれることらしい。脳の空想/妄想の機能が錆び付いてしまって、いまや物語が作れない(大変な労力がいる)のだよね。

これから歳を取るにつれ集中力も落ちてくるだろうし、困ったなとそれなりに思ってはみるものの、なるようにしかならないとお気楽に考えている節もある。創作の形態やアプローチには、生活の改善も含めて色々あると思うから。

だから、ここで日記を書くことの一つの動機は、創作の書き方を忘れないための、例えて言うなら文章の鉛筆削りとひとりで位置付けてる。もう一つの動機は創作とは関係ないけれど、書き記すことで忘れない→記憶の連続性が生きてる実感に繋がっている、ということだ。まれにここに載せている短文は、錆び付いた頭をぎーりぎーりと絞って採れているもの。短文を増やせたら、どこかに集めて、自分で撮った写真をお話に添えたいなあ。

その晩は、新月へ向かう月が空の高いところにあって、静まりかえった街路や物陰を、そのほのかな明かりで照らしだしていました。夜更けの街では、誰もが昨日のことをまどろみの奥深くへと仕舞い込んで、こんこんと休んでいるのでした。

一方で、そこからこぼれたものたちはどこか輪郭がぼやけたまま、降り注ぐ月の光とはい上がる闇とのあわいを縫うように彷徨いました。

月の光がほとんど届かない街の深いところでは、暗闇は水底のように重く満ち、しかし全くの静寂には今一つ届かないような、覚醒を抱えたものたちの潜める微かな息遣いがありました。もしそこで感覚を澄ませたなら、闇そのものも粒子のごとく遊動していることが分かったでしょう。

波止場から見る海は凪いでおり、ぴちゃぴちゃいう控えめな波音とともに、潮のゆっくり満ちてくる様子が見て取れました。

水平線の向こうまで続くあかね色や紺碧が、それぞれの方角ですみれ色に向かって限りない階調を描き出し、しかもそれらは刻一刻と、宇宙まで続いている黒に染まっていきました。

彼女は桟橋の手前で当り前みたいに突っ立っていました。

夕暮れを背にした波止場の往来を眺めたり、積み卸しや海鳥の喧噪に耳を傾けたり、そよぐ潮風を嗅いだりして、そこにいることをひとりで楽しんでいたのでした。

感覚を感じるままの手放しにしておくことは彼女の良くやる遊びでしたから、人からの干渉を受けない限りは邪魔もせず、退屈もせずに過ごせたのです。

そのうちに夕陽はほとんど海の向こうへ沈み、水平線は一瞬のあいだ、真っ赤な火柱を映しました。天球からこがね色が失われ、彼女の視界に入るものは急速に青みを増し、辺りは眠たいような温度とやわらかな影に包まれていきました。

ちらほらと宵の空に、一番星、二番星と星が現れ出し、船が漁り火を点して続々と沖へ出帆を始めるころ、彼女はおもむろに桟橋から離れました。そして軽やかに人の波に乗って、その日の宿がある繁華街へと歩いて行きました。

短文というのはこんな感じの端切れ。深刻にならずにやっていこう。

2019年5月30日(木)

使われずにいる祖父のとある畑に、二度目の除草剤散布をしていた。日中は祖父から昔の話をあれこれと聞いて、うちでは母が繰り出す祖父への悪口に合いの手を入れる。こういう曖昧な折衝は今は苦でないからいいものの、僕としては今日だけで平常の一週間ぶんくらいの他人の話を聞いていた気がする。むかし、サークルで得た友達に対して、自分は周りの話を聞く側に回ってばかり、とこぼしたことがある(考えが足りず傲慢なことだ)。それから蝶の鱗粉のよな少ない機会を経て思うのは、自分になんらかの聴き手に該当する適正はあるか、ということ。年長者におもねやすい自分の性質に自覚的かつ、内心で報酬を設定することがあるところを上手に解いていけたら、その辺りに人のために出来ることがあるように思う。

先日わーすごいと打ち上げ情報を眺めていたSpaceXのスターリンク衛星は、なんというかとても意外なところで問題に上がっていた。衛星が反射する光と通信時の電波が、いずれ星の観測を邪魔するということだ。えー、事前に何らかの対策があるのかと思っていた。日本語ではAFPBB Newsの「スペースXの衛星群、天文学者の「悩みの種」に」という記事を見かけた。スターリンク計画の星座が出来上がるような将来では、インターネットはもっとよく分からないものになっていくだろうから、空が静かだったころはねなんて枕詞や昔話が生まれるのかもね。静かな星空を味わうなら今のうちってことだ。

2019年5月31日(金)

原付で道を走っていると乾いた麦の香りがする。夕刻より僅かに雨。大気は熱と湿度をはらんで立ちこめており、夏の夕立のような肌触りをしていた。

昨日ここで年長者にどうのと書いたけれど、幾年か前の僕は生きることの根っこに苦痛を感じていた気がする。それで、自分よりも長い苦痛を乗り越えて生存しているひとに対し敬意を払う、みたいなやや偏った考えを持っていたような。いまではそういうことをわざわざ思考に挟んだりはしないなー。それに、書き残さないと忘れるような頭をしているため、かつて考えていたことはおおむねよく覚えていない。

先日立ち寄ったホームセンターでは球根ベゴニアの苗を見つけた。彼らの茎や葉の、水気を含んでぼってりした様子はとてもいいね。花は特に好みというわけでもないのだけれど、葉に入ったコリウスのような模様を見ていて、観葉植物として楽しむのもありだと思った。たぶん僕の見た球根ベゴニアは特に育てやすい品種なんだろう。この植物は触ると溶けるくらいに栽培が難しいと聞いており、個人的にブドウや薔薇や蘭といった、上級園芸家が愛すると思われるカテゴリーに入れている。うちには普通のベゴニアがいることだし、こういうデリケートなものよりも、丈夫さに定評があり慎ましやかなシュウカイドウが欲しいところ。

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